小林旭の人生と自宅を語る上で欠かせないのが、彼をめぐる女性たちと家族の絆です。若き日に世間を揺るがしたのが、美空ひばりさんとの結婚の経緯でした。1962年、映画界と歌謡界の頂点に立つ二人の電撃的な結婚は国民的行事となりましたが、実質的には入籍を行わない事実婚状態でした。ひばりさんの実母である加藤喜美枝さんの意向や芸能プロ興行界の複雑な事情、そして山口組三代目・田岡一雄組長の調停を経て、わずか1年7カ月で終止符を打つことになります。記者会見で見せた「愛しているから別れる」という引き際の美学は、昭和の芸能史に深く刻まれました。
その後、1967年に運命の伴侶となったのが、元東宝の看板女優であった青山京子さんです。結婚と同時に芸能界を引退した青山さんは、家庭を守る良妻賢母として小林旭を支え続けました。事業の失敗による51億円の借金に直面した際も、青山さんは取り乱すことなく「私が選んだ人ですから」と覚悟を決め、自宅にかかってくる無数の督促電話を一身に引き受け、夫が歌に集中できる環境を整え続けました。
しかし、半世紀以上にわたって連れ添った最愛の妻・青山京子さんは、2020年1月12日に肺がんのため84歳で逝去。葬儀で小林旭が見せた憔悴しきった表情と、棺にすがりつき流した涙は多くの涙を誘いました。愛妻を失った喪失感は計り知れないものでしたが、現在の小林旭の周囲には確固たる家族の支えがあります。長男の一路氏をはじめとする子供たちが定期的に自宅を訪れ、生活環境や健康面をきめ細かくケアしています。孤独死や孤立といった高齢者の課題とは無縁の、温かな家族ネットワークが現在の暮らしを守っています。