全4話で構成されたドラマのクライマックスにおいて、視聴者に最も強い喪失感と深い余韻を残したのが、ネコのタロを巡る展開です。ある日突然、アキコの前に現れて家族となった大柄な雄猫のタロは、母を失い、長年慣れ親しんだ出版社という居場所を追われたアキコの孤独を無言の温もりで埋めていました。しかし第4話において、タロは突然体調を崩し、静かにこの世を去ってしまいます。
突然のペットロスに直面し、感情を押し殺して淡々と店を開けようとするアキコ。その背中に寄り添ったのは、相棒であるしまちゃんの涙であり、向かいの喫茶店のママ(もたいまさこ)が差し伸べた飾り気のない優しさでした。ここで物語は、アキコの「出生の秘密」というもう一つの重大な結末へと収束していきます。
アキコはずっと、自分が母の「未婚の子」として生まれ、父の顔を知らずに育ったことに微かなわだかまりを抱えて生きてきました。しかし、母の古い友人であった喫茶店のママから語られたのは、母がかつて愛した男性(住職)との真摯な関係と、母がアキコを産み育てるためにどれほどの誇りと覚悟を持ってあの食堂を守り抜いてきたかという真実でした。さらに、寺の法要で偶然すれ違った異母妹(美波)の存在を通じて、アキコは「自分は誰からも否定される存在ではなかった」という事実を静かに確信します。
最終回のラスト、大貫妙子が歌う主題歌「この空の下で」が流れる中、突如として商店街の路上でアキコ、しまちゃん、喫茶店のママ、花屋のヤマダ(光石研)、乾物屋のスダ(塩見三省)らが一堂に会し、軽やかにステップを踏み出すミュージカル風のダンスシーンが描かれます。この唐突とも思えるファンタジックな演出は、大切な存在を失い、理不尽な世の中に傷つきながらも、「それでも私たちは、この街で、誰かと一緒に笑って生きていくのだ」という人生への力強い肯定を視覚化した名シーンとして、今なお語り継がれています。