タウンズビルの行政を司る市長室の描写には、当時の制作スタジオ「カートゥーン ネットワーク・スタジオ」が仕掛けた痛烈な社会風刺と、時代による倫理基準の変化に伴う生々しい裏話が存在します。
タウンズビルの市長さん(メイヤー)は、小柄で白髪、片眼鏡をかけた愛敬のある老人ですが、政治的判断能力は完全に幼児レベル。執務室で一日中ピクルスの缶詰を開けることに執念を燃やし、ガールズを呼び出す緊急回線(ホットライン)を「ピクルスのフタが開かない」という理由だけで鳴らすこともしばしばです。
その無能な市長の背後で、街の市政、予算管理、警察組織の指揮まで実質的な統治を一手に引き受けているのが、女性秘書のミス・ベラム(サラ・ベラム)です。彼女の最大の特徴は、「どんなアングルであっても絶対に首から上の顔が画面に映らない」という演出ギミックでした。グラマラスな体躯とビジネススーツを着こなし、抜群の知性を発揮する彼女の顔をあえて映さない手法は、視聴者の想像力を掻き立てると同時に、「権力者の無能さと、それを陰で支える有能な女性労働者の不可視化」という労働社会学的な皮肉としても読み解かれていました。
しかし、この設定はリブート版において大きな転換期を迎えます。2016年のリブートシリーズ制作時、プロデューサー陣は「抜群のスタイルを持ちながら顔を見せず、無能な男性市長の秘書として機能する描写は、2010年代以降のフェミニズムおよびジェンダー平等の観点においてステレオタイプを助長しかねない」と判断。公式に「ミス・ベラムは1000日間の長期休暇に入った」というナレーションとともに、レギュラーキャラクターから事実上降板させられる措置が取られました。長年のファンからは「過剰なポリティカル・コレクトネスによる名キャラクターの排除ではないか」との批判も巻き起こり、アニメにおける表現規制とポピュラーカルチャーの変遷を象徴する象徴的な事件として記録されています。