かつて琵琶湖の湖畔では、春になると産卵のために浅瀬に上がってくるニゴロブナの姿が日常的に見られた。だが、2026年現在の現実は厳しい。地球温暖化に伴う水温上昇や外来種の侵入、そして護岸工事による産卵場所の減少が重なり、野生のニゴロブナは激減している。価格は高騰し、今や「黒いダイヤ」とさえ呼ばれるほどだ。
地元の漁師や行政は手をこまねいているわけではない。人工授精による稚魚の放流や、ヨシ群落の再生事業など、泥臭い保全活動が続けられている。伝統を守るということは、単にレシピを維持することではない。琵琶湖という巨大な生態系そのものを守る闘いなのだ。