「あれ? 右が上だっけ、それとも左?」――客室の鏡の前で、誰もが一度は首をかしげたことがあるはずだ。結論から言おう。浴衣を羽織る際は、必ず「右前(みぎまえ)」にする。右前とは、自分から見て右側の身頃(右手に持っている衿)を先に胸に合わせ、その上から左側の身頃(左手に持っている衿)をかぶせる仕立てを指す。つまり、右手で胸元に手を差し込める状態だ。
ここで最大の落とし穴となるのが、「左前」にしてしまうことだ。左前は亡くなった方の衣装、いわゆる死に装束の着せ方である。うっかり逆にして歩き回ってしまうと、周囲に違和感を与えるだけでなく、「マナーを知らない人」という恥ずかしい印象を残しかねない。この基本ルールは、洋服のボタンの掛け合わせとは関係なく、性別を問わず全員共通だ。
長年にわたり伝統的な着こなしを指南してきた着物着付け師は、こう解説する。「鏡越しに見ると左右が反転して見えるため、混乱する方が非常に多いのです。『右手を胸元に入れやすい方が上』と覚えておけば間違いありません」。この一言を頭に入れておくだけで、現場での混乱は一気に解消する。