かつて日常的に見かけていた森永製菓 ベイクが、なぜ一時期店頭から姿を消す事態に陥ったのか。その発端は、2010年代後半に起きた急激な市場環境の変化と売上の落ち込みにありました。
森永製菓の公式発表資料や当時のマーケティング施策を振り返ると、ベイクは発売から順調に出荷を伸ばしていたものの、2010年代半ばから他社のコーティングチョコやパウチ型パウダースイーツ、さらにはグミ市場の急拡大という激しい棚取り合戦に直面しました。競合商品が「大人向けカカオ」や「健康志向」といった新たな切り口を打ち出す中、ベイクの最大の特徴である「手で溶けない焼きチョコ」という価値が、消費者の日常の選択肢から埋もれてしまったのです。
その結果、一時はピーク時から売上が大幅に減少。これを受け、2019年夏に森永製菓が実施したのが、ネット上を騒然とさせた「ベイクを買わない理由を100円で買い取ります」という前代未聞の自虐的キャンペーンでした。公式Twitter(現X)等を通じて「本当に売れていません」「どうすれば買っていただけるのか教えてください」と率直に発信したことで、集まった意見は数万件に達しました。
この異例のキャンペーンは「販売終了への布石ではないか」という憶測を呼び、実際にラインナップの整理によって一部のコンビニ店頭から一時的に姿を消したため、「ベイク 販売終了 理由」を検索するユーザーが急増することとなりました。しかし実態は、ブランドを終わらせるためではなく、市場の生の声を吸い上げて抜本的なリニューアルを図るための戦略的転換点だったのです。