母娘の関係に新たな変化が訪れたのは、2012年8月のことでした。坂口良子さんは、10年以上にわたって事実婚関係にあったプロゴルファーの尾崎健夫(ジェット尾崎)氏と正式に再婚します。杏里にとって尾崎氏は、幼少期から母のパートナーとして見知った存在であり、当初は家族としての再出発が期待されました。
しかし、幸せな新婚生活はわずか7ヶ月で悲劇的な結末を迎えます。2013年3月27日、坂口良子さんが57歳の若さで急逝。公表された直接の死因は横行結腸癌および肺炎でした。病魔は発見された時点で既に進行しており、入退院を繰り返す中でのあまりにも急激な別れでした。
母の他界によって、残された家族の均衡は一気に崩壊します。義父である尾崎健夫氏と、血のつながらない杏里や兄との間には、生活習慣や金銭感覚をめぐって埋めがたい心理的バウンダリーの断絶が存在していました。良子さんの四十九日法要を終えた後、杏里は尾崎氏と暮らしていた自宅を出て一人暮らしを始め、事実上の関係解消へと至ります。
さらに世間の耳目を集めたのが、坂口良子の遺産相続問題でした。一部週刊誌では「数億円の遺産が杏里に渡った」とセンセーショナルに報じられましたが、実態は大きく異なっていました。生前の巨額借金返済、高額な医療費、未払いの税金処理などを清算した結果、実際に手元に残った現金は数千万円程度だったと報じられています。不動産の権利関係も複雑であり、マネーリテラシーを教育されてこなかった杏里にとって、その遺産は身を助けるどころか破滅への引き金となってしまいました。