天一軒を訪れた者が必ず直面し、そして魅了されるのが、名物である鶏モモ焼きの選択です。メニュー上や店内の注文では「ヤワ(柔らかい)」と「カタ(硬い/通称:カシラ)」という独特の符牒で呼ばれており、これが初訪問の客にとっては最初の関門となります。
「ヤワ」は一般的な若鶏のモモ肉を使用しており、ふっくらと柔らかく、一口噛めばあふれ出すジューシーな肉汁が特徴です。鶏肉本来の素直な旨味と特製のタレ、絶妙な塩加減が調和し、子どもから年配客まで幅広く愛される味わいに仕上がっています。
対して、呑兵衛や常連客が熱狂的な支持を寄せるのが「カタ(カシラ)」です。こちらはじっくり育てられた親鶏(ヒネ鶏)のモモ肉を使用しており、一般的な鶏肉とは一線を画す強靭な弾力と、噛み締めるたびに溢れ出る濃厚なアミノ酸の旨味が最大の特徴。包丁で細かく切れ込みが入れられており、噛めば噛むほど野性味あふれるコクが口内を満たします。この圧倒的な歯ごたえと旨味の強さこそが、天一軒が唯一無二と呼ばれる最大の理由です。