獣の奏者エリンの歌が今も泣ける理由|主題歌・挿入歌の深層の基本情報から最新動向までを徹底的にカバーしました。

ネット上の感想や掲示板などで時折見られるのが、「主題歌や挿入歌が良いだけのアニメ」という安易な評価や、「ララリララリラは単なるBGMのハミング」という誤認です。しかし、本作の音楽的価値を語るうえで最大の要となるのは、劇伴(BGM)の全編を担当した作曲家・服部隆之の手腕です。

服部隆之といえば、大河ドラマ『真田丸』や『新選組!』、数々の映画・ドラマ音楽を手掛ける日本屈指の劇伴作家ですが、『獣の奏者エリン』における仕事はとりわけ先駆的でした。本作では、西洋のフルオーケストラ編成を土台に据えつつ、中央アジアやケルト、東洋の民族楽器の音色を大胆に取り入れています。

リョザ神王国という架空の世界の自然環境、王獣の威厳と狂気、闘蛇(とうだ)の恐ろしさといった非現実的な情景を、服部は土の匂いが立ち込めるような生々しい音色で具現化しました。単に美しいメロディを添えるのではなく、劇伴自体がエリンの息遣いや生態系の厳しさを雄弁に語る舞台装置となっていたのです。

また、エンディングテーマ「きっと伝わる」に尺八奏者の藤原道山が作曲として参加している点も見逃せません。主題歌・劇伴・挿入歌が個別のプロモーションとして分断されることなく、作品世界という一つのタペストリーを織り上げるために完全に調和していたことこそが、本作の音楽が現在も極めて高く評価される理由です。