彼女の名がアニメファンの記憶に強く刻まれた最初の衝動は、2018年放送の『ダーリン・イン・ザ・フランキス』におけるイチゴ役だろう。メインキャストへの大抜擢となったこの作品で、複雑な恋心に揺れる少女の青々とした葛藤を等身大のリアリティで演じ切り、業界内に大きな衝撃を与えた。声優としてのキャリアをスタートさせたばかりとは思えぬ感度の高さは、すでに大器の片鱗を覗かせていた。
その才能が一気に開花した決定打が、ガンダムシリーズの金字塔となった『機動戦士ガンダム 水星の魔女』だ。主人公スレッタ・マーキュリー役に選ばれた市ノ瀬は、内向的で挙動不審な序盤の立ち振る舞いから、過酷な運命に立ち向かう力強い眼差しに至るまで、驚くべきグラデーションで演じ分けた。激しい戦闘と緻密な人間ドラマが交錯するSFアニメの金字塔において、彼女の声は作品全体の感情的支柱となったのである。