他人事は「ひとごと」「たにんごと」どっち?本来の読みと誤用の真相の真相について、分かりやすい解説を取りまとめてご紹介します。

なぜ「他人」と書いて「ひと」と読ませるのか、そのからくりは日本語の成り立ちである「大和言葉(やまとことば)」と「漢字の当て字(熟字訓)」の歴史にあります。

もともと古代から中世の日本には、「自分以外の誰か」を指す「ひと(他人)」と、出来事を意味する「こと(事)」を組み合わせた「ひとごと」という大和言葉が存在していました。平安時代の文献や和歌にも登場する由緒正しい言葉であり、当時は「他人言」「他人事」「他人言(他人の噂話)」など様々な表記が試みられていました。

時代が下るにつれ、「自分以外の人物」を表す概念として中国から渡ってきた漢語「他人(たにん)」が普及します。近世以降の表記において、「ひとごと」という既存の和語に対して、意味が合致する「他人」という二字の熟字を当て、全体で「ひとごと」と読ませる「熟字訓(じゅくじくん)」が定着しました。「今日(きょう)」「昨日(きのう)」「大人(おとな)」と同じ言語構造です。

つまり、語源から見れば「ひとごと」という音に対して、意味から「他人事」という漢字を当てはめたのが真相です。「他人(たにん)」+「事(こと)」という足し算で単語が作られたわけではないため、文字を素直に音読み・訓読みで混ぜ合わせた「たにんごと(重箱読み)」は、文法的な成り立ちを無視した誤読とみなされてきた歴史があります。