日本の芸能界や企業社会において、高齢になっても権力や役職にしがみつき、後進へのバトンタッチを誤って晩節を汚してしまうケースは後を絶ちません。老年心理学および家族社会学の観点から分析すると、タモリが見せている身の引き方は極めて高度な「心理的成熟」を示しています。
心理学における「エイジング(加齢)の受容」とは、かつてできたことができなくなる喪失感を認め、残されたエネルギーを真に大切な人間関係や内省的充実に再配分するプロセスを指します。タモリの場合、過度な自意識や「大御所としてのプライド」に囚われることなく、自分の身体の衰えを客観的に観察し、周囲に惜しまれるタイミングで静かに役割を譲り渡しました。ここには、仕事と自己アイデンティティを混同しない健全な「心理的バウンダリー(境界線)」が確立されています。
タモリの生き方に学ぶべき人・慎重になるべき人の判断基準
私たちが彼の生き方を人生の参考にするにあたっては、向き・不向きの条件が存在します。
- タモリ的アプローチを参考にすべき人:
- 仕事や役職を失うと自分の価値がなくなるのではないかと不安を抱えている人
- 「反省」を繰り返しすぎて、自己肯定感をすり減らしがちな真面目すぎる性格の人
- 老後を見据え、夫婦関係や自分自身の趣味を核にした生活再構築を目指す人
- そのまま模倣することに慎重になるべき人:
- まだ社会的な基盤や実績が未確立で、目の前の努力や反省が成長に必要なキャリア初期の若手層
- 孤独に耐えうる知的好奇心や「没頭できる趣味」をまだ持てていない人(単なる無気力・現実逃避に陥るリスクがある)
タモリの「適当」というスタンスは、徹底的な教養と現場での責任を果たし抜いた人間だけが到達できる「洗練された適当」です。その土台を理解した上で、肩の力を抜く知恵だけを抽出することが肝要です。