劇中において『海導』は、物語の要所で効果的に使用され、観客の感情を最高潮へと導きます。
最初に印象深く響くのは、クザン(青キジ)が温泉地や旅の途中で静かに口ずさむアカペラの歌唱シーンです。恩師であるゼットの暴走を止めようと単身動くクザンが、かつて海軍で共に過ごした日々に想いを馳せながら哀愁たっぷりに歌い上げる姿は、大人の色気と切なさを漂わせています。
そして最大のハイライトとなるのが、クライマックスの最終決戦です。ルフィとの男と男の拳の語り合いを終えたゼットの前に、かつての教え子である黄猿(ボルサリーノ)率いる海軍の大軍勢が立ちふさがります。
クザンが作り出した巨大な氷の防壁を背に、満身創痍のゼットはルフィたちを逃がすため、たった一人で海軍軍団へと突撃。「お前らに、最後の稽古をつけてやる!」と言い放ち、黄猿の容赦ない攻撃を浴びながら拳を振るい続けるゼットの姿に、重厚な合唱版の『海導』が重なります。
さらに映像は、幼少期のゼファーが正義のヒーロー「Z(ゼット)」に憧れて木刀を振るう無邪気な回想シーンへと切り替わります。正義を信じ、正義に裏切られ、それでも最期まで「正義の味方」として逝った男の散り際と、『海導』の神々しいメロディの融合は、『ONE PIECE』映画史上屈指の名演出として語り継がれています。