親が何度も変わり、苗字も変わる。一見すると数奇で過酷な境遇に思える設定を、圧倒的な多幸感と愛情で包み込んだのが映画『そして、バトンは渡された』だ。令和の日本映画界に鮮烈なインパクトを残したこの作品は、血の繋がりを持たない親たちが、それぞれのやり方で一人の少女に注いだ愛情のリレーを描いている。
劇中で描かれる親子関係には、従来の家族観が押し付けてきた義務感や重苦しさがない。むしろ、血が繋がっていないからこそ生まれる敬意と、相手を思いやる純粋な意志が画面を満たす。一緒に過ごした時間の濃度と、食卓を囲んだ記憶の集積が、血縁以上の絆を強固に築き上げていくプロセスは圧巻だ。
誰が本当の親なのかという二者択一の問いを軽やかに飛び越え、愛した事実そのものを尊ぶ。本作が見せた家族像の提示は、血縁至上主義が根強く残る社会に対して投げかけられた、優しくも鮮烈なカウンターパンチであった。