正式名称を「日本銀行券C号千円札」と呼ぶこの紙幣は、昭和38年(1963年)に世に送り出された。当時の日本は東京オリンピックの開催を翌年に控え、急速な経済成長の真っ只中にあった。偽造防止技術を刷新し、増大する現金需要に対応するために投入された背景がある。
表面には初代内閣総理大臣を務めた伊藤博文、裏面には東京都日本橋にある日本銀行本店の姿が精巧に描かれている。重厚かつクラシカルな意匠は、明治維新以降の日本史が辿った近代化への歩みをそのまま映し出した鏡と言っても過言ではない。紙幣のデザイン一つひとつに、当時の国家の威信と美意識が凝縮されているのだ。