ネット上のまとめ記事や掲示板では、彼女について「売名行為に失敗して勝手に消えたタレント」という短絡的な評価が下されがちです。しかし、当時のメディア環境と芸能界の力学を丹念に検証すると、別の側面が見えてきます。
第一の誤解は、「彼女が計算ずくで記者会見を開いた」という言説です。実際には、20代前半の若い女性タレントが、大手スポーツ紙や写真週刊誌の記者たちに囲まれ、心理的に追い詰められた末のパニック状態であったことが当時の取材テープからも窺えます。計算高く立ち回る悪女どころか、あまりに無防備で世間知らずであったがゆえに、メディアの過激なスキャンダル消費の格好の標的にされてしまったというのが実像に近いと言えます。
第二の盲点は、彼女が引退後すぐに困窮したわけではないという点です。華やかな芸能界の栄光に固執し、怪しげなビジネスや暴露系YouTuberのような道に走る元タレントが少なくない中、桜庭あつこは自らの手で過去と決別しました。プライドを捨てて一般の接客業や民間企業で働き、自活する道を選んだ姿勢は、むしろ称賛に値する現実的な判断でした。