この痛ましい事故を巡っては、インターネット上でいくつかの重大な誤解や不正確な言説が長年放置されてきました。事実に基づく正確な検証が必要です。
第一の誤解は、「後続車のドライバーが一方的な前方不注意や悪質なスピード違反で逮捕され、実刑判決を受けた」という噂です。実際には、後続車を運転していたドライバーらは過失運転致死傷の疑いで書類送検されたものの、検察の綿密な検証の結果、最終的に嫌疑不十分による不起訴処分となっています。
その理由は、現場の道路工学的条件下における「回避可能性の欠如」にありました。雨天の夕方、視程が遮られる急カーブを下りきった直後、追い越し車線上や走行車線上に立っている歩行者を視認してからブレーキを踏んでも、制動距離の限界から物理的に衝突を回避することは不可能であったと法的に認定されたためです。
第二の誤解として、「なぜ非常停止表示板(三角表示板)や発炎筒を使わなかったのか」という疑問が挙げられます。これも当時の現場検証によれば、衝突の衝撃でトランク付近の荷物が散乱・圧迫されていたこと、さらには最初の単独スリップから二次衝突までの時間が極めて短く、安全器具を取り出して設置する猶予が実質的に残されていなかったことが分かっています。誰か一人を断罪できるような単純な過失ではなく、幾重にも重なった悪条件の連鎖が引き起こした事故でした。