極上鮨の醍醐味は、板前の創意工夫が凝らされた特別おまかせコースにある。仕入れの段階から勝負は始まっている。豊洲市場での壮絶な競りを経て板場に運ばれる素材は、単に新鮮なだけではない。魚の部位ごとに数日から数週間におよぶ熟成(エイジング)が施され、最も旨味が溢れ出す瞬間に握られる。
「同じマグロでも、脂の乗り方や水分量によって切り込みの深さやシャリの赤酢のブレンドを変えます」と語る職人の手元には、寸分の狂いもない。季節限定の白身魚や自家製カラスミを添えたアテなど、仕込みに膨大な時間を費やした逸品がコースの流れを彩る。一口食べた瞬間に解けるシャリと極上の脂の調和は、まさに仕込みの裏側に隠された努力の賜物だ。