映画ファンの記憶に鮮烈に焼き付いているもうひとつの顔が、東宝が誇る平成ゴジラシリーズでの重厚な指揮官役だ。1993年の『ゴジラvsメカゴジラ』から『ゴジラvsデストロイア』に至るまで、G対策協議会の麻生孝昭司令官役として特撮スクリーンの中心に君臨した。
巨大怪獣という非現実的な脅威に対し、大人が本気で立ち向かう緊迫感を画面に吹き込んだのは、紛れもなく中尾の重厚な芝居だった。合成やミニチュアを多用する特撮の現場では、目の前に怪獣が存在しない中で演技を成立させなければならない。中尾は揺るぎない眼力とリアリズムに満ちた声のトーンで、作品全体に説得力を与え続けた。虚構を本物に変える力を持つ俳優として、特撮史にその名を深く刻み込んだ瞬間である。