発端となったのは、2014年から2015年頃にかけて首都圏の主要路線で多発した異臭トラブルでした。とりわけJR山手線や京浜東北線、小田急線などの車内において、「凄まじい腐敗臭が漂っている」「座席が一区画だけ完全に空いている」といった投稿がSNS上で相次ぎました。
その中心にいたのが、包帯やビニールで何重にも巻かれ、黒ずんで腫れ上がった左足を持つホームレス風の男性です。ネットユーザーはその痛々しい風貌から彼を「左足壊死ニキ」と呼び始め、車内での姿や移動経路がリアルタイムで共有される事態へと発展しました。当時のネットの反応は、生理的な嫌悪感や運行支障への不満だけでなく、生命の危機を心配する声や行政の対応を求める意見など、多岐にわたる複雑なグラデーションを見せていました。
電車の車両全体に異臭が充満して乗客が一斉に別車両へ避難する「モーセの十戒」のような現象が日常化し、鉄道各社も対応に苦慮するなど、単なるネットの噂にとどまらない社会問題へと拡大していったのです。