バックドアの威力を極限まで高めるのが、対となるフロントドアの存在だ。フロントドアは、打者の内角ボールゾーンからインコースのストライクゾーンへと食い込ませる球筋を指す。インサイドへの恐怖心を与えた直後に、アウトサイドからストライクゾーンへと舞い戻る球を投げ込まれた打者は、対応の術を失う。
この内と外の対比を巧みに操る代表格がダルビッシュ有だ。彼は多彩な変化球と圧倒的なピッチデザインのセンスを駆使し、MLBの強打者たちを幾度となくフリーズさせてきた。また、二刀流として世界を席巻する大谷翔平も、投手として登板した際には打者の内角・外角を広く使ったインテリジェンス溢れるピッチングを展開する。両ドアを自在に使い分ける配球術は、現代の最高峰ピッチャーに欠かせない資質となっている。