年寄名跡の歪みが最も劇的な形で表面化したのが、元横綱・貴乃花光司の角界去就劇だった。かつて平成のフィーバーを巻き起こした大横綱でありながら、一門の対立や協会との激しい確執の末、年寄名跡を返上して日本相撲協会を去るという前代未聞の事態に発展。名跡が単なる指導権にとどまらず、角界における政治的権力の道具として機能してきた歴史を鮮明に浮き彫りにした。
さらに近年、元横綱白鵬の宮城野翔(現・宮城野親方)を巡る一連の騒動も、相撲部屋の運営と名跡継承の難しさを改めて露呈させた。弟子の不祥事を端緒とする部屋の閉鎖や名跡の取り扱い、他の部屋への預かり措置などは、どれほど圧倒的な現役時代の実績があろうとも、名跡の権限と協会のガバナンス下では抗えない現実を示している。