堀内孝雄がシンガーソングライターとしての第一歩を踏み出した昭和40年代、その道は決して平坦ではなかった。谷村新司、矢沢透とともに結成したフォークソングバンド「アリス」の初期は、鳴かず飛ばずの売れない時代が続き、明日の生活さえままならない極貧の日々を過ごしたという。そんな不遇の時期に彼を信じ、共に歩むことを誓ったのが妻だった。
当時の音楽業界は空前のフォークブームに湧いていたものの、新進気鋭のグループが成功を掴むのは至難の業。食事も満足に取れないような下積み時代、文句ひとつ言わずに家計をやりくりし、夫が音楽だけに没頭できる環境を作り上げた奥さんの内助の功は計り知れない。ベーシストやドラマー、ヴォーカリストがしのぎを削る熾烈な音楽業界で、堀内が自身のメロディを磨き続けられたのは、帰るべき温かい場所があったからこそだ。