江利チエミの生涯を語る上で、名優・高倉健との関係を外すことはできない。1959年、二人は世間の熱烈な祝福を受けて結婚した。映画界の若きスターと歌謡界のトップシンガーという組み合わせは、まさに理想のビッグカップルとして誰もが羨む存在だった。
だが、結婚生活は順風満帆では終わらなかった。待望の子宝に恵まれるも、重度の妊娠中毒症により中絶を余儀なくされ、子どもを授かる夢は断たれた。さらに二人の絆を決定的に引き裂いたのが、彼女の実の異父姉による破滅的な裏切りだった。
異父姉はチエミの実印を勝手に持ち出し、不動産や預金を担保に巨額の借金を重ねて失踪。被害額は当時の金額で数億円、現在の価値にして数十億円にのぼる莫大なものだった。チエミは夫である高倉健に金銭的・社会的な迷惑を一切かけたくないという一心から、自ら申し出て1971年に離婚届に判を押した。愛し合いながらも別れを選ばざるを得なかった断腸の決断は、彼女の心に生涯消えない傷痕を残した。