ウランバートル市内にそびえ立つ近代的な校舎。2018年に開校した「新モンゴル日馬富士学園」は、元横綱が私財を投じて創設した小中高一貫の総合学校だ。開校当初は元力士による学校経営という色眼鏡で見られる向きもあった。しかし、その懸念は瞬く間に驚嘆へと変わる。
学園が掲げるのは、徹底した人間教育と国際標準の学術指導の融合である。日本の学校文化である「掃除」「挨拶」「礼儀作法」をカリキュラムに組み込み、心身の規律を重んじる一方、高度なSTEM教育(科学・技術・工学・数学)や複言語教育を展開。開校から数年を経て輩出された卒業生たちは、東京大学や京都大学、東京工業大学をはじめとする日本の最難関大学や欧米の名門大学、モンゴル国内のトップ高等教育機関へと次々に進学を果たしている。
現場を視察する教育関係者を驚かせるのは、日馬富士自身の関わり方だ。名誉職として名前を貸すのではなく、理事長としてカリキュラムの選定から施設管理、生徒一人ひとりの進路指導に至るまで細部に関与する。泥臭く土俵で汗を流した男の情熱は、今やモンゴルの次世代エリートを育む強靭なエンジンとなっている。