嵐山光三郎のキャリアを語る上で欠かせないのが、大手出版社である平凡社での編集者時代だ。『太陽』などの名物雑誌を手掛けながら、鋭い感覚で時代の空気を捉えていた。転機となったのは、伝説の雑誌『面白半分』の編集長に就任したことだ。野坂昭如や吉行淳之介、開高健といった異彩を放つ文豪たちが歴代編集長を務めたこの媒体で、嵐山は文壇の巨匠たちと正面から対峙し、彼らの人間味溢れる素顔に触れることとなる。
編集者として培われた眼差しは、やがて軽妙洒脱なエッセイストとしての才能を大きく開花させた。出版業界の裏表を知り尽くした男のペンは、滑らかでいて毒を含み、読者の心を一瞬で掴んだのだった。