戦後間もない寄席の世界は、江戸情緒や明治の型を至高とする古典落語が圧倒的な主流を占めていた。そんな保守的な空気のなか、現代に生きる市井の人々の悲喜こもごもを舞台上に持ち込んだのが米丸だった。サラリーマンの悲哀、高度経済成長期の住宅事情、急変する家庭環境。時代の空気を鋭敏にキャッチし、誰もが共感できる笑いへと昇華させる手腕は群を抜いていた。
新作落語を単なる「色物」や「思いつきの一発芸」で終わらせず、確立された一ジャンルへと引き上げた功績は計り知れない。彼の創り出す噺は、時代の風俗を切り取った痛快なドキュメンタリーでもあった。テンポの良い会話の応酬と、日常の些細なズレを突く着眼点。観客はそこに、昨日体験した自分自身の姿を見て腹を抱えて笑った。