東洋医学の古典的な知見は、現代医学の解剖学・神経生理学の進展によってその作用機序の解読が進んでいる。世界保健機関(WHO)による経穴部位の国際標準化以降、世界中の研究機関で経絡経穴のネットワークと神経伝達の相関が調査されてきた。
呼吸器に関わるツボは、頚髄や胸髄から伸びる交感神経・副交感神経の反射区と密接に重なり合っている。ツボへの物理的刺激は、末梢の受容器から脊髄を経由して自律神経中枢へ伝達され、過剰に興奮した咳反射弓のシグナルを遮断する。同時に、局所の血管拡張を促して血流を改善し、粘膜の乾燥を防ぐ分泌液のバランスを回復させる。国家資格を持つ鍼灸師が臨床で活用するこれらの技術は、単なる民間療法ではなく、生体の神経反射を巧みに利用した合理的な医療アプローチといえる。