少年の心に義の精神を植え付けた一方で、大人の男たちが抱える野望と孤独を冷徹に描いたもう一つの顔が存在する。それが「史村翔」名義での創作活動だ。小学館をはじめとする各誌で展開された作品群は、少年誌の枠組みでは描ききれなかった人間の生々しいエゴイズムと社会の構造的闇を容赦なく抉り出した。
とりわけ漫画家・池上遼一との長年にわたる盟友関係から誕生した『サンクチュアリ』や『HEAT -灼熱』は、日本の青年漫画におけるハードボイルドの到達点として名高い。表と裏の社会から国家の変革を目論む男たちの姿は、バブル崩壊後の閉塞感に苦しむ当時の日本社会に強烈な劇薬として打ち込まれた。少年誌での熱血とは対照的な、静寂と暴力が同居する重厚なドラマツルギーは、今なお色あせることのない緊張感を放っている。