森ビル一族の歴史を紐解く上で欠かせないのが、創業者・森泰吉郎の存在だ。学者出身という異色の経歴を持ちながら不動産業界へと身を投じた彼は、強靭な先見の明をもって港区虎ノ門を中心とする「ナンバービル」群を次々と建設。小規模な地権者を丁寧にまとめ上げる独特の用地買収手法を確立し、東京の都市再開発における土台を力強く築き上げた。
彼の指導力は圧倒的であり、家族が一丸となって都心部の価値向上に邁進した。単なる賃貸ビル事業の枠を超え、街づくりそのものを捉え直す視点は、その後の同族経営における不動産ビジネスの決定的な指針となったのである。