なぜ私たちは数千本の映画を前にして、30分も画面をスクロールした挙句に何も観ずに画面を閉じてしまうのでしょうか。
心理学ではこれを「選択のパラドックス(The Paradox of Choice)」と呼びます。選択肢が多すぎると、人間は「最善の選択をしなければならない」というプレッシャーから決断麻痺に陥り、選んだ後も「他の作品のほうが面白かったのではないか」という後悔を抱きやすくなります。
さらに、現代の「タイムパフォーマンス(タイパ)至上主義」がこの傾向に拍車をかけています。2時間の映画を観るという行為は、可処分時間の投資として決して小さくありません。「絶対に失敗したくない」という心理が過度なレビュー依存を生み、結果として型にはまった人気作ばかりを消費するループを生み出しています。
この罠から脱出するためには、「今日は70点くらいの気軽な気持ちで観る」「冒頭15分で引き込まれなければ迷わず別の作品に切り替える」といった、視聴の心理的ハードルを下げるルール設定が極めて効果的です。