「熱はないのに鼻の奥だけが常に熱を持ってヒリヒリする」「何かが張り付いているような異物感が取れない」という訴えの背景には、粘膜のバリア破綻と後鼻漏(こうびろう)の併発が多く見られます。
鼻粘膜や副鼻腔から分泌された粘液が喉側へと流れ落ちる後鼻漏は、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎に伴って発生します。粘度を増した鼻水が上咽頭に停滞し続けると、付着した細菌や分解酵素が粘膜を絶え間なく刺激し、発熱を伴わない持続的な炎症状態(慢性上咽頭炎)へと移行します。
さらに見過ごせないのが、慢性上咽頭炎と自律神経の密接な相互連関です。上咽頭の粘膜直下には迷走神経や頸部交感神経節へつながる神経ネットワークが高密度に分布しています。局所の慢性炎症が持続的な神経刺激として脳幹・自律神経中枢にフィードバックされることで、以下のような不定愁訴が二次的に誘発されるメカニズムが解明されつつあります。
- 原因不明の慢性疲労感・起床時の重だるさ
- 頭痛・首こり・肩甲骨周囲の頑固な緊張
- めまい・ブレインフォグ(頭にモヤがかかったような集中力低下)
- 睡眠の質の低下および日中の強い眠気
「たかが鼻の奥の違和感」と放置して数ヶ月が経過した結果、原因不明の自律神経失調症と診断されていた患者の根本原因が、実は上咽頭の局所炎症であったという臨床データは日本病巣疾患研究会(JSFID)の報告等でも多数蓄積されています。