長年第一線で走り続けてきた彼にも、大きな試練が訪れた。がんの公表やリハビリ期間を経たことで、音楽に対する視線はより深く、より静謐なものへと変化していった。病を克服した後のステージで見せた姿は、かつての鋭利な疾走感とは異なり、一音一音を慈しむような深い温かさに満ちていた。
「声が出る限り、ステージに立ちたい」。そのシンプルな思いは、過酷な闘病生活を支える原動力となった。ステージ上でギターを抱え、穏やかな笑顔で客席を見渡す彼の姿は、同世代のファンだけでなく、生きづらさを抱える現代の多くの人々に静かな勇気を与え続けている。