インターネット上の掲示板やSNSで定期的に話題となるのが、プーさん著作権フリーの真相に関する議論です。「著作権が切れたから、プーさんのイラスト素材を使ってグッズを販売しても合法」という言説を見かけることがありますが、知的財産法の観点から見るとこれは極めて危険な誤解を孕んでいます。
発端となったのは、A.A.ミルンが執筆しE.H.シェパードが挿絵を手掛けた1926年出版の児童小説『Winnie-the-Pooh』が、米国著作権法(出版後95年間の保護期間満了)に基づき、2022年1月1日付でパブリックドメイン(公有財産)に帰属した事実です。
しかし、プーさんパブリックドメインの詳細を正確に整理すると、法的保護の対象は明確に分かれています。
1. パブリックドメイン化した範囲
保護期間が満了したのは、あくまで1926年の原作小説に登場する「挿絵のクマ(いわゆるクラシックプーイラスト)」のデザインやテキストです。毛並みの質感が細い線画で描かれ、洋服を着ていない素朴な姿のプーさんがこれに該当します。
2. 依然として強力な権利が存在する範囲
一般に広く認知されている「赤いTシャツを着た、黄色く丸っこいフォルムのプーさん」は、ウォルト・ディズニー社が1966年にアニメーション映画化(『プーさんとはちみつ』)した際に独自に創作したディズニー公式プーさんの意匠です。このアニメ版のデザイン、カラーリング、キャラクター造形は現在もディズニーが保有する独立した著作権によって厳格に保護されています。
さらに、「Winnie the Pooh」や「くまのプーさん」の名称、特徴的なフォントロゴなどは商標権として手厚く登録・維持されています。商標権には著作権のような満了期限がなく、更新し続ける限り永続するため、原作のパブリックドメイン化を理由に「ディズニー風のプーさんイラスト」を商用利用することは明白な権利侵害となります。