新井里美の最大の武器は、鼻腔に抜けるような独特のハスキーボイスと、喉の鳴りを生かした艶のある質感です。しかし、彼女の真骨頂は声質そのもの以上に「極端なダイナミクスを制御する発声技術」にあります。
たとえば『とある科学の超電磁砲』の白井黒子では、貴族的な令嬢の気品を漂わせる丁寧な発声から、御坂美琴に迫る際の濁声・怪鳥音のような叫び声までを1センテンスの中でシームレスに行き来します。この緩急は単なる声の奇抜さではなく、徹底的な発声コントロールとブレス管理によって成立している高度な職人芸です。
一方で、『リゼロ』のベアトリスのように、長大な時間を生きる精霊の諦念や、心の奥底に隠した孤独を吐露する場面では、息成分を多めに含ませた繊細なウィスパーボイスへと移行します。コミカルな芝居で培われた「音の跳躍力」が、シリアスな場面では「感情の深度」として転化される構造こそ、新井里美が単なる個性派声優にとどまらない決定的な要因です。