『アンナチュラル』が放送された当時、視聴者とメディアに最も強いインパクトを与えたのが、石原さとみの劇的なビジュアルの変化でした。
放送直前の2010年代半ば、石原さとみといえば『失恋ショコラティエ』(2014年)のサエコ役や『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』(2016年)に代表されるように、トレンドを先取りしたヘアメイクや鮮やかな衣装を着こなす「圧倒的憧れのミューズ」として君臨していました。女性誌のベストビューティー企画で殿堂入りを果たすなど、彼女の纏うオーラは華やかさそのものでした。
しかし『アンナチュラル』の現場において、彼女は過剰な装飾を完全に削ぎ落としました。ドラマ評論家の田幸和歌子氏も言及しているように、解剖着や白衣に身を包み、髪を無造作に後ろで束ねた「ほぼすっぴん」に近いナチュラルメイクで登場したのです。
大手映画・ドラマレビューサイト「Filmarks」に寄せられた9,700件を超えるレビューや当時のSNS投稿を分析すると、放送初期には「いつものさとみちゃんじゃない」「最初誰だかわからなかった」という驚きの声が散見されました。しかし回を追うごとに、その評価は劇的に変貌していきます。
「飾り気がないのに内面からの透明感と美しさが際立っている」「丼飯を豪快に頬張る姿に、生きることへの強烈な執着を感じて涙が出た」といった称賛の声がタイムラインを埋め尽くしました。視聴者が求めていたのは、作られた「可愛い記号」としての女優ではなく、過酷な現実の中で生き抜く一人の女性としてのリアリティだったのです。