片岡愛之助の名を全国区の茶の間に知らしめた最大の転機といえば、社会現象となった大ヒットドラマ『半沢直樹』での黒崎駿一役だろう。金融庁のオネエ口調の検査官という強烈なキャラクターを怪演し、その圧倒的な存在感で日本中を席巻した。歌舞伎で鍛え上げられた眼力と発声、そして独特の「間」の取り方は、テレビドラマという空間でも異彩を放った。
その一方で、映画『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』では、妻である藤原紀香とスクリーン上で奇跡の夫婦共演を果たした。冷酷無比な知事役の愛之助と、妖艶な妻役の彼女が魅せた怪演合戦は、観客を爆笑と興奮の渦に巻き込んだ。伝統的な舞台芸術の素養を持ちながら、シュールなコメディから重厚な社会派ドラマまで軽やかに跳躍する彼の演技幅。その背景には、常に批評的かつ温かな眼差しで助言を送り続ける妻の存在があった。