世界中で旋風を巻き起こしている映画『ウィキッド ふたりの魔女』。エルファバ役を演じたシンシア・エリヴォの圧倒的歌唱力は、世界の映画評を席巻している。彼女の歌声の秘密は、単なる声量の豊かさや音域の広さだけにとどまらない。声帯を自由自在にコントロールする完璧なボーカルテクニックに加え、セリフの延長として歌を昇華させる感情表現の緻密さにある。
撮影現場からは、驚くべき独占裏話も明かされている。通常、大規模なミュージカル映画の撮影では事前にスタジオ録音した音源に口パク(リップシンク)で合わせる手法が一般的だ。しかし、彼女は劇中の歌唱シーンのほぼすべてを現場で生歌で収録するという破格の決断を下した。ワイヤーアクションで空中に吊り下げられながらも、一切のブレを見せずに名曲『Defying Gravity』を熱唱。スタジオに響き渡る生のソウルフルな歌声に、共演者やスタッフ陣は息を呑み、思わず涙を流したという。
「歌は魂の発露であり、その瞬間の生の感情でしか表現できない熱量がある」。彼女が語ったその哲学が、映画のあらゆるフレームに宿っている。長年舞台で培われた喉のスタミナと、身体全体を楽器のように共鳴させる独自のトレーニング法が、スクリーン越しにも観客の皮膚を粟立たせる圧巻のライブ感を生み出しているのだ。