人生は順風満帆なストーリーばかりではない。プライベートでの苦痛や家族を巡る騒動、世間の好奇の目に晒され続けた私生活は、時に本業の評価すら覆い隠すほど大きかった。逃げ場のないカメラの前で叩かれ続けながらも、男は逃げなかった。
「苦痛や失敗こそが、役者としての最大の肥やしになる」。かつてそう語った通り、近年の舞台や映像作品で見せる悪役や陰のある男の演じぶりには、理屈を超えた説得力が漂う。綺麗事だけでは生きていけない人間の業や哀しみを、過剰なセリフを使わずに背中で語る演技。それは、数々の修羅場をくぐり抜けてきた者だけが醸し出せる空気感だ。