高校古典の定期テストや入試問題において、最も失点しやすいのが「敬語の種類と敬意の方向」および「助動詞の意味・活用」です。特に「小柴垣のもと」は、地の文の語り手(紫式部)から光源氏への敬語、登場人物相互の身分差に基づく敬語が複雑に交錯します。
代表的な重要センテンスを取り上げ、品詞分解と構文解釈の急所を整理します。
【重要例文1:雀の子の場面】
原文:「雀の子を犬君が逃がしつる。伏籠のうちに籠めたりつるものを。」
現代語訳:「雀の子を犬君が逃がしてしまったの。伏籠の中に閉じ込めておいたのに。」
[品詞分解と文法ポイント]
・「逃がし」(サ行四段動詞「逃がす」連用形)+「つる」(完了の助動詞「つ」連体形)
・「籠め」(マ行下二段動詞「籠む」連用形)+「たり」(存続・完了の助動詞「たり」連用形)+「つる」(完了の助動詞「つ」連体形)+「ものを」(詠嘆・逆接の終助詞「〜のに・〜ことよ」)
※「つる」の連続使用により、少女が直前まで夢中になっていた遊びが台無しになった悔しさと、目の前で起きた出来事の臨場感が鮮やかに演出されています。
【重要例文2:尼君の嘆きと敬語の判別】
原文:「『いづれの御子どもならむ。』と見給ふに、」
現代語訳:「『いったい誰の姫君であろうか。』と(光源氏が)ご覧になると、」
[品詞分解と敬語の識別]
・「見」(マ行上一段動詞「見る」連用形)+「給ふ」(尊敬の補助動詞「給ふ」連体形)
・敬意の種類:尊敬語
・敬意の方向:語り手(作者) ⇒ 光源氏
※「給ふ」が単独で動作(「お与えになる」等)を表す場合は本動詞、動詞の連用形に接続して動作主を敬う場合は補助動詞となります。ここは「見」に付いているため補助動詞です。
【重要例文3:光源氏の発見と心情】
原文:「面貌(かほつき)いとまもりつづけて、『げに、御容貌(かたち)の似奉り給へるかな。』と、あはれに思し入る。」
現代語訳:「(源氏は少女の)顔つきをじっと見つめ続けて、『本当に、(藤壺の宮の)お顔立ちに似申し上げなさっていることだなあ。』と、胸深くしみじみと思い続けなさる。」
[品詞分解と二重敬語・謙譲語の識別]
・「似」(ナ行上一段動詞「似る」連用形)+「奉り」(謙譲の補助動詞「奉る」連用形)+「給へる」(尊敬の補助動詞「給ふ」已然形+存続の助動詞「り」連体形)
・「奉る」の敬意の方向:光源氏(発話者) ⇒ 藤壺の宮(似ている対象)
・「給ふ」の敬意の方向:光源氏(発話者) ⇒ 若紫(主語である少女)
※一文の中に「謙譲+尊敬」が組み合わさっており、若紫に敬意を払いつつ、似通った元である藤壺の宮を一段高く敬う高度な敬語表現です。大学入試の記述問題で極めて差がつくポイントとなります。