戦国最強の戦国大名である織田信長と、その妹として知られるお市の方。ふたりの血縁関係を織田家の家系図から紐解くと、信長とお市はともに父・織田信秀、母・土田御前(どたごぜん)から生まれた同腹の兄妹であると伝えられています。信長には多くの兄弟姉妹が存在しましたが、同じ母を持つ直系の妹として、お市は織田家中でも別格の尊厳を帯びた存在でした。
注目すべきはお市の方と織田信長の年齢差です。信長は天文3年(1534年)生まれですが、お市の生年は諸説あるものの天文16年(1547年)説が最も有力視されています。つまりふたりには約13歳の年齢差があった計算になります。信長が青年期に家督を継ぎ、尾張統一の泥沼劇を戦い抜いていた頃、お市はまだ幼少期を過ごしていました。信長にとってお市は、単なる政略の駒という以上に、庇護すべき年の離れた妹としての深い情愛を注ぐ対象であった背景が窺えます。
当時の史料や記録類を照合すると、信長は妹たちの中でも特にお市に対して格別の気配りを払っていました。彼女が成人を迎える頃には、織田家の勢力伸長とともにその存在は「天下を動かすカード」としての重みを増していきます。血脈としての強い結びつきと、乱世の冷徹なパワーゲーム。この二重構造こそが、ふたりの兄妹関係を劇的かつ過酷なものへと昇華させた根本要因です。