「徒歩1分=80メートル」。不動産業界で長年定着しているこの計算基準は、国土交通省の指導に基づく「不動産の表示に関する公正競争規約」で定められた厳格なルールだ。しかし、この数式には現場のリアリティが意図的に抜け落ちている。信号待ちの時間や歩道橋の昇降、坂道の傾斜、さらには踏切での遮断時間は一切考慮されていない。
盲点となるのが「駅のどこを起点としているか」だ。地下鉄の巨大ターミナルでは、地上出口から電車のドアに辿り着くまでに5分以上かかるケースが珍しくない。不動産・都市開発の現場では、地上出入口ができただけで「駅直結」を謳うマーケティングが横行する。数字上の徒歩分数に踊らされず、実際の生活動線を足で確かめることの重要性は、かつてないほど高まっている。