南雲の行動原理を解き明かす鍵は、単行本でも屈指の人気エピソードである「JCC過去編」にすべて刻まれています。当時、殺し屋養成機関JCCの落ちこぼれ問題児組として固い絆を結んでいたのが、坂本太郎、赤尾リオン、そして南雲の3人でした。彼らにとってJCC時代は、殺伐とした裏社会で唯一無二の青春を共有した尊い時間でした。
しかしその平和は、同級生であった有月憬が関与した事件、そして何より赤尾リオンの不可解な失踪と死亡によって決定的に破壊されます。リオンが命を落としたとされる現場に居合わせ、その心臓を奪ったとされるスラー(有月)。しかし、有月の中に「赤尾リオンの第二人格」が宿っているという異常事態が判明したことで、事件の構図は単純な加害・被害の関係を超えた深い闇を帯び始めました。
南雲が抱き続けてきた執念は、「なぜリオンは死ななければならなかったのか」「有月の体の中にいるリオンは何者なのか」という一点に集約されます。有月の内面に潜むリオンの痕跡を直接目撃し、言葉を交わすためには、スラーの一味である「楽」という最強の隠れ蓑を被って至近距離に身を置く以外に選択肢がなかったのです。